福井大学医学部附属病院・高度生殖医療センター センター長 折坂誠

福井大学医学部附属病院・高度生殖医療センター
センター長 折坂誠

 

「未来へつながる、いのちの医療。」

ヒトの体は37兆個の細胞からできていますが、その始まりは、たった一つの精子と一つの卵子の出会いです。受精卵はお母さんのお腹の中で細胞分裂を繰り返し、少しずつ形を成し、やがて一人の赤ちゃんとして誕生します。生命の誕生に至るまでの一つひとつの過程は、まさに奇跡の積み重ねといえるでしょう。

日本では、約4.4組に1組(23%)のカップルが不妊症に悩んでいるといわれています。誰もが望んでその状況にあるわけでなく、不安や悲しみを感じる場面も少なくないと思います。それでも現在は、医療の進歩によりさまざまな選択肢があります。いま日本では、8.5人に1人の赤ちゃんが、体外受精や顕微授精によって誕生しています。かつては叶わなかったかもしれない妊娠・出産の可能性が、確実に広がっています。さらに不妊治療の保険適用によって、その機会はより身近なものとなりました。

当センターでは、福井県内の産婦人科と連携しながら、科学的根拠に基づいた最新の不妊治療を提供しています。また、その治療成績を本ホームページで公開し、透明性のある医療を大切にしています。ヒトはもともと妊娠しやすい生き物ではなく、不妊治療においても一度の治療で結果が出るとは限りません。初回の治療で出産に至る方がいる一方で、治療を何度も繰り返してようやく赤ちゃんを迎える方もいらっしゃいます。そして残念ながら、治療を尽くしても出産に至らない場合もあります。私たちは日々、妊娠・出産が多くの偶然と幸運の重なりの上に成り立っていることを実感しています。

私たちは、国内外のガイドラインや信頼できる最新の知見に基づいた不妊治療を実践しています。その一方で、有効性が十分に証明されていない先進医療やオプション治療については、あえて実施しておりませんので、どうぞご了承ください。結果が思うように出ないとき、「できることはすべて試したい」と思われるお気持ちは、私たちも深く理解しています。しかし、公的な生殖医療センターとして、確かな根拠に基づく検査と治療を、適正な形で提供することが私たちの責務であると考えています。

私たちは、子宮筋腫や子宮内膜症、子宮内膜ポリープなど、妊娠の成立に悪影響を及ぼす疾患に対して、手術療法を積極的に行っています。高度な男性不妊に対しては、専門の泌尿器科医が診断・治療にあたります。また、体外受精や顕微授精によって妊娠された方は、出産のリスクが高くなることも知られています。当院には産科医療や新生児医療の専門医が多く在籍しており、お母さんが無事に出産を迎え、赤ちゃんとともにご自宅へ帰られるまで、切れ目なくサポートしてまいります。

不妊治療は、必ずしも思い通りに進むものではありません。それでも、あきらめずに歩み続け、ようやく赤ちゃんを抱かれる方々を、私たちはこれまで数多く見てきました。一方で、不妊治療に区切りをつける決断をされる方もいらっしゃいます。どのような道を歩まれることになっても、私たちは妊娠・出産を望むすべての方々を、全力で支えてまいります。

一人でも多くの赤ちゃんがこの世に誕生し、ご家族に笑顔が広がっていくことを、心から願っております。

福井大学医学部附属病院・高度生殖医療センター

センター長 折坂誠