~妊娠・出産のために手術が必要なことがあります~
子宮内膜症・子宮筋腫・子宮内ポリープについて
不妊治療が進化する一方で、妊娠・出産のために手術が必要なことがあります(生殖外科手術)。
私たちは、特に子宮内膜症や子宮筋腫、子宮内膜ポリープの手術に力を注いでいます。
その手術が本当に妊娠の可能性を高めるのか、キチンと見定めて、最善の手術を完遂することは、決して容易でありません。
私たちは、妊娠・出産を見据えた手術と、最適な不妊治療を組み合わせることを、得意としています。
子宮内膜症
子宮筋腫
子宮内ポリープ
妊娠・出産を見据えた手術と、
最適な不妊治療を!
子宮内膜症手術について
子宮内膜症のために卵巣が腫れる「チョコレート嚢腫」という病気があります。
これまで卵巣にチョコレート嚢腫が見つかると、腹腔鏡による手術が盛んに行われていました。
ところが、手術によって多くの卵胞が失われ、卵巣の機能が低下した結果、体外受精の採卵さえ難しくなるケースが見られるようになりました。
最近は、「妊娠するなら手術より体外受精」という考え方が、主流になりつつあります。
私たちが手術を考える目安は、チョコレート嚢腫が4~5cmを超えたときです。
卵胞をできるだけ残したいので、アルゴンプラズマ凝固装置を用いて、卵巣のダメージを最小限に抑えるよう工夫しています。
アルゴンプラズマ凝固装置を用いて
卵巣のダメージを最小限に!!
子宮筋腫核出術について
子宮筋腫は、女性の3~4割に認めるありふれた疾患で、手術が必要なケースは多くありません。
一方で、①子宮の内腔へ突出する粘膜下筋腫や、②子宮の内腔が変形する5~6cm以上の筋層内筋腫は、胚の着床を妨げる可能性があり、核出術の適応と考えられます。
手術の種類にもよりますが、子宮筋腫の術後は、子宮の創部治癒を一定期間(2~8ヵ月)待たねばなりません。
その待ち時間を利用して、体外受精で胚を凍結保存し、子宮の創が癒えてから、胚を融解移植することで、治療の効率アップをはかっています。
子宮筋腫の核出術と体外受精を組み合わせて、
治療の効率アップを!
子宮鏡下子宮内膜ポリープ切除術について
「子宮内膜ポリープがあると絶対妊娠できない」というわけではありませんが、やはり無い方がいいみたいです。
子宮内膜ポリープがある不妊女性に対する、人工授精の累積妊娠率は、非切除群28%に対して、子宮鏡下切除群63%と、ポリープ切除群で有意に上昇しました。
私たちは2020年、子宮内膜ポリープや粘膜下筋腫を合併する不妊患者16名に、子宮鏡下切除を行いました。
術後、無事に出産できた患者さんが10名、やはり62.5%でした。
このように、不妊女性の子宮内腫瘍を切除するメリットは大きいと考えます。
5つのタイプの子宮鏡を使い分けており、短期入院で手術が可能です。
子宮内膜ポリープ・子宮粘膜下筋腫
子宮鏡下切除 16名
↓
出産10名(62.5%)
(2020年 福井大学病院)
人工授精の累積妊娠率
非切除 | 子宮鏡下切除 |
28% | 63% |
Bosteels 2018 Cochrane Database Syst Rev
シェーバー型の細径子宮鏡で、
短期入院の手術が可能に
卵管鏡下卵管形成術について
2022年4月から、卵管鏡下卵管形成術も導入します。
卵管造影検査で、子宮近くの卵管間質部~峡部が閉塞・狭窄している症例には、卵管鏡下に卵管形成術を試みます。
手術が上手くいけば、2~3割で自然妊娠が期待できるので、体外受精へステップアップする前に、トライする価値はありそうです。
一方で、術後もなかなか妊娠しない場合は、体外受精へ速やかにステップアップします。